• 惠泉(けいせん)ノア製作所
  • 惠泉(けいせん)マナベーカリー
  • ビュウソーイング
  • ハレルヤ典礼
  • 惠泉(けいせん)アモスファクトリー
  • 文泉(もんぜん)書院
  • 惠泉(けいせん)マリア訪問看護ステーション
  • 惠泉(けいせん)ひかり訪問介護ステーション
  • レストハウス惠泉
  • イベント企画
  • 惠泉インターナショナルプログラム
  • ヴィタポート愛
  • 珈琲とパンの店ヴィタ/ショップ ヴィタ
  • 中国小麦粉料理専門店 惠泉
  • 丹波の宿 恵泉

お知らせ

マリア
【利用者様の声】「真珠の耳飾りの少女」

一昨年、私たちの共同体で三ヶ月を過ごされ、天に召されたKさんのお母様から手紙を頂きました。そこにはこんな句がしたためられていました。

 「逝きし娘(こ)と 同じ瞳(め)をして振り返る  少女に会いに 美術館に行く」

 そして手紙には、フェルメールの「真珠の耳飾りをした少女」の絵が同封されていました。

  驚きました。本当に同じ瞳なのです。ちょっと悲しげで、でも温かく愛らしい…。

 

 Kさんは、心の病、交通事故(命にかかわる大事故でした)による後遺症、そして乳がんと三重の苦しみを通ってきたお嬢さんでした。手術、化学療法、放射線治療、そして自然食療法とあらゆる努力の末、人生の最期を自分の第二の故郷、余市で過ごしたいとやって来られました。私は看護師として、そんな彼女に三ヶ月寄り添い続けました。

 

 残された時間の少ないことを感じ、「私は死ぬのが恐いです。先生は恐くないですか?」と牧師に尋ねるKさんでしたが、病気が骨や肺に転移したことが告げられた頃より、彼女の心は天国に向けられるようになりました。

 

5月のある日曜日の礼拝で仲間たちに語った彼女の言葉です。

  「…戦いの日々の中で、たくさんの信仰の気づきが与えられ、神様を第一とすることや、自力で頑張るのではなく、神様に全てをゆだねて、全てを明け渡し、どんな時にも最善を成してくださる神様を信じ抜くことが大切であると学ばされています。

 私の今こうして経験している事は天国へ行くための訓練であり、準備であるかもしれません。病も死もなく苦しみも涙もない神様の愛で満ち溢れている天国に導かれるように神様にお祈りする毎日です。」

 

 「骨や肺に転移したらどうなるの?」、「死ぬ時はどんな症状が出るの?」、「あとどれ位かなぁ」、「呼吸困難で死ぬのは辛いから、その時は鎮静剤で眠らせてほしい」、「眠って天国へ行きたい」、「イエス様が迎えに来てくださるかなぁ」、私にはそんなことも話していました。

 

主治医から苦しい時は使うようにと坐薬を渡されていましたが、その時期は、私の判断に任されていました。6月27日早朝、その時が来ました。Kさんの呼吸困難は極度に達し、酸素を最大限に流しても楽にはなりませんでした。

  私は彼女に「Kちゃん、約束通り、これから鎮静剤を使います。イエス様がもうすぐ来てくださると思いますよ。」と言いました。彼女は大きな瞳をさらに大きく見開いて、嬉しそうに「ほんと?!」と答えました。家族全員がベッドのまわりに集まりました。一人ひとりが「ありがとう」を言いました。お姉さんは「Kちゃんは最高の妹だったよ!」と言いました。満ち足りた空気の中でKさんは眠りはじめました。呼吸困難も幾分やわらぎ、ベッドに横たわることができるようになりました。3、4時間して薬の効果が切れたらまた追加するので知らせて下さいとお母さんに伝えて、部屋を出ましたが、それから3時間半ほどしてKさんは眠ったまま静かに天に召されて行きました。

 

朝早く、仲間の一人がクローバーの花輪を作って病室に届けてくれましたが、それは奇しくもキリストの花嫁となって旅立って行ったKさんの遺体を飾る冠となりました。

  毎年、6月になるとクローバーで花輪を編んでレストハウスの玄関に飾り、Kさんを忍びます。

 

   クローバの花の冠を頂きて 永遠に旅立つ 花嫁なる君

 風のごと 命の終わりを駆けゆきて 天にぞありし我が妹よ

 

9月19日 スムムム・ボヌム

2012年9月19日